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シェルパたちも目を丸くする。
なにしろ店では和服だから、顔だけでなく、襟足も手も日焼けしては困るのだ。
サングラスにつばの広い帽子、首にタオルを巻き、両手に白手袋、長いスラックス姿。
おまけに日傘をさす。
朝夕の太陽が低いときには、鼻から下もガーゼで覆う。
誰いうとなく、「月光仮面のおばさん」と呼ぶことになった。
Tシャツに短パンのOLたちの軽装とは対照的である。
さぞ暑苦しいことと思うが、ひたすら我慢に徹しているようだ。
その精神力の強さには恐れ入るばかり。
トレッキング中はもちろん風呂に入れないし、シャワーもない。
4日も5日も風呂に入れないと聞くと、ショックを受ける人も多い。
しかし、ヒマラヤの絶景やキャンプの楽しさに気を奪われるのか、ほとんどの人が風呂のことは忘れてしまって、ケロッとしている。
途中に水場が多いから洗髪はできるし、シェルパにお湯をもらっておしぼりを作り、テントのなかで体を拭くこともできる。
顔や手足を洗う湯や水も、テントに運んでくれる。
ところが、毎日2度も風呂に入る習慣の彼女にとっては、もうたまらないようだ。
4日目の午後、ノーダラの手前の村を通りかかると、村の水場に大勢の村の女たちが集まって洗濯をしたり、洗髪している者もいる。
子どもたちは真ちゅう製の大きな容器を抱えて、水くみに来ている。
まさに井戸端会議の賑わいだ。
とつぜん彼女が「もう辛抱たまらないから私、水浴びしてくる」といって姪に日傘を2本持たせ、「日本人は来てはだめよ」といいながら、水場に向かった。
2本の傘を広げて、そのかげに座り込んだようだ。
「おばちゃんがすっ裸になった。
恥ずかしいわ私、早くしてよ」と、姪が叫んでいる。
村の女たちに見られても平気で、悠然と体を洗っている。
私たちは家のかげにかくれて休んでいた。
しばらくして「ああ気持ちよかった」と、さっぱりした顔で戻ってくると、またもや月光仮面のおばさんに変身した。
村の水場で、腰巻きをしたまま体を洗っている女はよく兄かけるが、傘のかげとはいえ、すっ裸で体を洗った外国人は、おそらく彼女が初めてではないだろうか。
当分の間、村の話題になることだろう。
きれい好きには違いないが、心臓の強さもたいしたものだ。
カトマンズに戻ると、みんな真っ黒に日焼けしているから、彼女の色白さは、いっそう際立っていた。
帰国後1カ月ほどしてから、彼女の料亭を訪ねると、「あんなにしていても顔と手が少し日焼けして、店の人に黒いっていわれたわ。
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